PICの使い方(ハードウェア編)


PICのハードウェア、つまりICチップそのものの使い方について説明します。
電池でも長時間動作させることが出来る低消費電力のPICですが、その
特徴を活かすための使い方を説明しています。


1.使用上の留意点

PICを部品として使って回路設計をする場合に注意すべきことが幾つかあります。
ここではそれらをまとめて説明しています。
ここのもっと詳細については、「内蔵モジュールの使い方のページ」を参照して
下さい。

(1)発振素子について
  CPUを動作させるために必要なクロックを作るための素子として下記が
  使えます。速度や消費電力などの用途に依って選ぶことができます。
  それぞれの場合の回路や定数についてはデータブックに詳しく書かれて
  いますので、そちらを参考にしてください。

  LP(Low Power Crystal) :100KHz以下の水晶振動子(主に時計用)
                電池動作の極低消費電力にする場合に使う。
  XT(Crystal/Resonator) :4MHz以下の水晶振動子かセラミック振動子
                それほどの速度を必要としない場合に使う。
  HS(HighSpeed Crystal/ :4MHz以上10MHz以下の水晶振動子または
        
Resonator)   セラミック振動発振子
                高速で動かす必要がある場合に使う。
  CR(Register/Capasitor) :抵抗とコンデンサによる発振(4MHz以下)
                推奨値はR:5〜100KΩ C>20pF
                周波数が不正確かつ変動しても問題無いとき
                に使いますが、余りお勧め出来ません。
                外部ノイズや温度で変動、誤動作の可能性大。


(2)電源について
  電源電圧については、絶対最大定格:7.5V となっていますので、
  これ以上の電圧をかけると壊れますので注意して下さい。

  電源電圧と消費電流は、クロックとして何を使うかにより変わって来ます。
  データシートに依れば下記の様になります。

  低速水晶,RC,LPの場合:4.0 〜 6.0V
               1.8 〜 4.5mA at5.5V(4MHz)
               (最大4MHzまで)
  高速水晶振動子の場合  :4.5 〜 5.5V
               7.3 〜 10 mA at5.5V(10MHz)
               (最大10MHzまで)

(注)
 「PIC16F84-10」はLPモードは不可、「PIC16F84-4」を使うこと。
 簡単に言うと、
   電圧は5Vで、消費電流は、低速なら5mA以下、
   高速なら10mA以下と思っていれば大丈夫です。

 電圧は以外と許容範囲が狭いので、3端子レギュレータで5Vに定電圧化
 する必要があります。
 もっとも、PICはかなり頑丈に出来ていて、かなり電圧が変わっても
 ちゃんと動いてくれる様です。但し、最大性能は出ないかも?

(参考)特に低消費電力にしたいとき
  電源は5Vに定電圧化し、クロック周波数を出来る限り低くする。
  発振素子としては、32KHzの水晶振動子を使うのが便利。
  さらに「PIC16LF84」を使えば電源電圧を2Vまで下げ,32KHzの
  クロックとすれば、何と 15〜35μA という極低消費電力とする
  ことも出来ます。(PIC16LF84が簡単に入手できるかどうかは不明)


 (3)入出力ピンの許容電流について

PICの入出力ピンはドライブ能力が大きく、発光ダイオード(LED)や
リレーなどを直接駆動でき非常に便利です。
しかし、全部のピンで最大許容電流で同時に駆動するとポート全体の
許容電流をオーバーし、発熱、破壊につながる可能性もありますので、
注意が必要です。

  許容シンク電流:PORTA:80mA PORTB:150mA (引込み電流)
  許容ソース電流:PORTA:50mA PORTB:100mA (供給電流)
  許容消費電力 :パッケージ当たり:800mW
  1ピン当たり :最大シンク電流:25mA(出力Lowの時)
          最大ソース電流
:20mA(出力Highの時)

    例 :出力ポートでリレー(25mA)を直接ドライブしたとすると、
       全ポートだと下記の様に許容をオーバーし発熱したりして
       危険です。
         PORTAで 25mAx5ポート=125mA となり80mAをオーバー
         PORTBで 25mAx8ポート=200mA となり150mAをオーバー
  結局
    PORTAは 80mA/5ポート=16mA   が最大許容電流
    PORTBは 150mA/8ポート=約19mA が最大許容電流
    ということになります。(全ポートを同じように使う時です)



2.回路設計の実際(市販キットの利用)

実際に自作のPICを使ったハードウェアを作る手順を説明します。
とりあえずPICを早く試したいということで、作る回路は単純にLED(発光ダイオード)
をPICから直接ドライブして点灯/消灯ができるようにしたものです。
基板を自作して作ることも可能ですが、ここはまずPICに慣れることからということで、
手っ取り早く市販のキットで作ってみます。
  

・AKI−PICプラチナキット
 (発売元 秋月電子通商 \3k)
  専用基板とPIC16C84、XTAL、CR、電源
  レギュレータなどが一式入っている。
  基板にはユニバーサル部分があるので
  一寸した外付け回路が付けられます。
 (添付パーツは自作ROMライタ用のものです。)

これを使ってPICを初めて動かすための「LED点滅回路」を例題とします。
PICはかなり大電流を直接ON/OFFすることが出来ます。どれぐらいかというと、
各ピン当たり25mAの引込みが最大となっています。発光ダイオードはせいぜい
10mAも流せば明るく光りますので十分です。

5Vの電源で10mAを流すには、LEDでの電圧降下が約1Vぐらいですから
(4V-0.6V)/10mA=340Ω ということで約300〜500Ωぐらいの抵抗をLEDに直列に
挿入してPICの出力ポートにつなぎます。
出力ポートはPICの場合プログラムで自由に決められますから、今回はPORTAの
RA0,RA1,RA3の3個を接続しました。

あとは、10MHzの水晶振動子とそれに接続するコンデンサですが、コンデンサはデータ
ブックで、15〜33pFとなっていますので20pFとします。

リセット端子(MCLR)にはリセットスイッチを取り付け何時でもリセットが出来るようにして
おきます。この端子は抵抗でプルアップして5Vがかかるようにします。
(プルアップ抵抗は 3k〜20kΩぐらいです)
電源回路は3端子レギュレータ7805で5Vの定電圧を作ります。このレギュレータの前後に
電解コンデンサ(47〜100uF)を付けます。極性があるので取り付けには注意して下さい。
あと電源ランプ代用にLEDを追加しておきます。こうして出来上がった回路が下図です。



   回路図はパソコンCAD HiwireII を使っています。
  詳しくは、このCADのフリーソフト版を入手して見て下さい。

        LED点滅制御 回路図

   (参考)HiWIRE U入手先
       ★ HiWIRE U School version  

3.組み立て方の実際

組み立ては基板は出来あがっているので、部品を配置して半田付けという作業に
なります。部品では電源(電池)との接続に電源用ピンプラグを使ったので、それを
両面接着テープで固定しています。あとはPICと電源周りはプリント板で配線済み
ですから、発光ダイオードとリセットスイッチを適当なスルーホールに固定し配線
します。
    

PIC周りのコンデンサ、
電源レギュレータ関連の
配置と配線です。

電源用のプラグ周りと
各LED、リセットスイッチ
の配置と配線です
抵抗をうまく使って
配線をしています。
赤色LEDが電源表示用です。


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