モータのOn/Off制御法

【モータの制御】

モータをコンピュータで制御する時の基本はOn/Off制御です。
つまり、モータの起動・停止だけで制御します。
起動・停止だけで制御できるものは数多く、すべてのモータ
制御の基本になります。

【制御基本回路】

モータをOn/Off制御する時の基本回路には幾つかあります。

(1) トランジスタ駆動(エミッタ負荷)
  下図の回路としてトランジスタをOn/Offすることで、モータ
  をOn/Offします。しかし、この回路はトランジスタを完全に
  飽和したOn状態にはできず、Vceが大きいので電圧ロスが
  大きくなってしまいます。
  動作としては、自動的に負帰還が働くため動作は安定です。
  このため、簡易な速度制御を行うためオペアンプを追加した
  回路が使われます。
  この場合、トランジスタでの電力ロスがそのまま熱となり
  ますので、トランジスタの熱対策は十分行う必要があります。
  


(2)トランジスタ駆動(コレクタ負荷)
  モータをトランジスタのコレクタの負荷としたもので、トラン
  ジスタを完全に飽和したOn状態で駆動できるため、ドライブ
  能力が大きく電圧ロスも少なく出来ます。
  従って、一般的にはこの回路が多用されています。

  


(3)逆起電力の処理
  トランジスタがOnとなってモータが回っている間には、モータ
  のコイルにはエネルギーが貯えられています。
  そしてトランジスタがOffとなると、そのエネルギーを放出しよう
  とするため、モータのコイルの両端には、プラスマイナスが逆向
  きの起電力が発生します。
  この電圧は非常に大きくなるため、そのままではトランジスタが
  破壊されてしまうこともあります。
  
  そこで、この対策として、コイルをショートさせて残っているエネ
  ルギーを瞬間的に電流として流してしまい、逆起電力を抑制して
  しまうようにします。
  この働きをするのが下図のダイオードの働きで、逆向きの
  起電力のみショートさせ、通常の電圧に対しては高抵抗となり
  何もしないことになります。



【Hブリッジ制御回路】

モータのOn/Off制御は上記の回路で問題無く出来ます。しかし
回転の向きを変えたい時には、どうしたら良いのでしょうか。
モータに加える電圧のプラスマイナスを逆にすればモータは
逆転するのですが、上記回路ではそれは難しいことです。

そこで、単一の電源でモータに加える電圧の向きを変えられる
回路として考案されたのが、「Hブリッジ回路」です。
基本構成は下図の様になっており、H型をしていることから
こう呼ばれています。

基本動作は、Q1とQ4のトランジ
スタだけを同時にOnとすると、青線
の様に電流が流れ、モータは正転
します。
逆にQ2とQ3だけをOnとすれば、
赤線の様に電流が流れ、モータは
逆転することになります。
さらにQ3とQ4だけを同時にOnと
するとモータにブレーキをかける
動作となります。

【モータドライバIC】

最近は、モータドライブ用の専用ICがあり、これらには上記
のHブリッジが内蔵されているものがほとんどですので、
トランジスタ等のディスクリート部品で組むことはほとんど必要
が無いようになっています。
当然のことながら、逆起電力吸収用のダイオードも内蔵されて
いますが、それ以外に熱遮断回路や過電流保護回路も内蔵
されています。
下記はこのモータドライバの代表的なICです。

  TA7257P

・出力電流 1.5A(ave) 4.5A(peak)と大容量
・モードは正転、逆転、ストップ、ブレーキの4モード
・逆起電力吸収用ダイオード内蔵
・熱遮断、過電流保護回路内蔵
・動作電源電圧  6〜18V



  TA7291P

・最大電源電圧 : 4.5〜20V
・出力電流   : 1.0A(平均) 1.5A(最大)
・その他     熱遮断回路内蔵
         出力端子プロテクタ回路内蔵
         逆起電力吸収用ダイオード内蔵
         入力ヒステリシス回路内蔵
         スタンバイ回路内蔵


これらのICの中身は下図の様になっていて、Hブリッジが内蔵
されている。


【実際の使用例】

モータ制御用ドライバICの実際の使用例の回路は下図の様に
なります。PICに接続するのは、IN1,IN2の2ラインだけで、これ
で正逆転、ストップを制御出来ます。
下図はラジコン自動車の車載側のコントローラで、2個のモータ
をラジコン受信機からのシリアル信号を解析してパルス幅に応じ
て前進後進の制御をします。






  次のページへ     目次ページへ