PICマイコンの電力消費の源


【概要】

 PICマイコンの消費電流はCMOS構造によるICの特徴をそのまま持っています。
つまり、動作中の消費電流は、CMOSを構成するトランジスタのスイッチング時の貫通電流が
大部分となり。静止している待機中の消費電流はリーク電流によるものとなります。

CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor

【CMOS ICの動作電流の源】

PICが動作している間の消費電流は、CMOS構造の「貫通電流」に大部分支配されます。
この貫通電流とは、下記のようなCMOS構造に起因するものです。

 CMOS構造の論理ゲートは、下図のようにpチャネル(上側)とnチャネル(下側)のMOSFETを
相補型に配置したインバータゲートを基本構成として構成されています。
 この構成の回路で、InputがGND電位の場合は、ハイサイド(上側)のトランジスタがオンとなり、
ローサイド(下側)のトランジスタがオフとなって、出力はHighとなります。
逆にInputがVdd電位の場合には、ローサイドがオンとなり、ハイサイドがオフとなって、出力は
Lowとなります。
いずれの状態でもどちらかのトランジスタがオフですから、VddとGND間には電流が流れないため
CMOS構造のICは非常に消費電流が少なくなります。


 このCMOS構造での動作時の消費電流は、下図のように、両方のトランジスタのオン、オフが
入れ替わる瞬間にだけ2つの理由で現れます。
 ひとつは両方のトランジスタのオンからオフ、あるいはその逆への切替には動作遅延があること
によるもので、切り替わる瞬間に、両方のトランジスタがともに電流が流れる状態となり、Vddから
GNDに電流が流れてしまいます。これを「貫通電流」と呼んでいます。
もうひとつは、MOSFETトランジスタを切り替えるために必要なゲートのドライブ電流です。


 このように、CMOS構成のICの動作時の消費電流は大部分スイッチングする瞬間に発生します。
この消費電流の大きさは、スイッチングの遅延に依存し、下記式のような関係で表されます。
Cは入力ゲートの寄生容量や、出力側の負荷容量などの合計で、ほとんどチップの製造プロセスで
決まってしまいますので、ユーザがコントロール不能なものです。
したがって、ユーザがコントロールできるのもは、電圧とスイッチング周波数、つまりクロック周波数
ということになります。


消費電流を少なくするには

 V:電源電圧
 f:クロック周波数


を下げることが必要

【待機時の消費電流の源】

 動作中の消費電流は、上述のように電源電圧とクロック周波数で決定されますが、
待機中はクロックが停止していますから、スイッチングによる消費電流は存在しません。
この間の消費電流は、下図のような、トランジスタのドレインとソース間に流れる非常にわずかな
「漏れ電流」、「リーク電流」だけとなります。


 このリーク電流は、ICの製造プロセスや、内部配置などで決まってしまいますが、それ以外に
電源電圧(Vdd)と温度に比例して増加します。
したがって、待機時の消費電流の削減には、少ないリーク電流の製品を選択し、電源電圧を
低くすることが必要ということになります。