音声録音再生ユニット

 ワンチップの音声録音再生用LSIを使った
 音声録音再生ユニットを試作してみました


【概要】

 米国Winbond社が開発した。ワンチップの音声録音再生用LSI「ISD2560」を
使って、簡単な音声録音再生ユニットを試作してみました。
結構クリアな音声で録音再生できることが判りました。 このあとはこれを使って
しゃべるロボットなどを作ってみるのも面白いかなと思っています。


本ユニットとスピーカを接続したところ
試作なので基板のままです。



【ユニットの構成】

ワンチップのLSIを使うのでユニットとしては簡単な構成です。
 ISD2560をPIC16F84Aで直接制御して、複数ブロックの音声録音と再生ができる
ようになっています。
 LSIで直接スピーカも駆動できますが、音量不足を考慮して、専用のアンプICを
追加しています。 これで十分の音量でスピーカを駆動できます。




このLSIの購入は下記でオンラインで出来ます。

   ★マイクロテクニカ社



【LSI概要】

 この音声録音再生用LSIは、基本構成は同じで、サンプリング周波数により、
下記のようなシリーズに分かれています。
今回使用したのは、シリーズの中で最も周波数バンド幅の広いものになりますが、
そのかわり60秒という録音時間に限られます。
この周波数帯域幅は通常の電話と同じ周波数帯域です。

型名 録音時間 サンプル周波数 フィルタバンド幅
ISD2560 60秒 8.0kHz 3.4kHz
ISD2575 75秒 6.4kHz 2.7kHz
ISD2590 90秒 5.3kHz 2.3kHz
ISD25120 120秒 4.0kHz 1.7kHz

このLSIの内部構成は下図のようになっています。内部に不揮発メモリを内蔵して
いているのが特徴で、音声をサンプリングしてそのデータを直接このメモリに格納
します。
再生の時は、このメモリから同じサンプリング周波数で取り出し、スムーズフィルタ
を通して通常の音声に近い音にしてから、アンプで増幅して外部に出力します。
このアンプは、小型のスピーカなら十分ドライブできますので、簡単な録音装置
の場合には直接スピーカを接続できます。

また入力にマイク用のプリアンプも内蔵していますので、直接コンデンサマイクが
接続できます。しかもこのアンプはゲインの自動調整機能が付いていますので、
ほとんど信号レベルを考えなくても良いので便利に使えます。

サンプリングなどに必要なクロック信号も内部で生成していますので、外部から
供給するクロックは何も必要ありません。




このLSIにあるアドレス指定は、録音、再生の開始位置を指定できるようにする
ためのもので、ちょうど録音時間の60秒に合わせて、0から600のアドレスが
指定できるようになっています。
つまり、0.1秒単位で開始位置を指定することができるわけです。

制御方法は簡単で、
 (1) 録音か再生かを指定する
 (2) 開始アドレスを指定する
 (3) 録音、再生したい時間だけCEをLowにする
これだけのステップで自由に録音、再生ができます。ただし、終了アドレスは指定
できないので、外部からのCE端子への信号の持続時間で制御する必要があります。
もし次に指定する開始アドレスが、前の録音時間と重なると上書きされてしまいます。


 今回のユニットには、大音量でも大丈夫なように、出力に専用のパワーアンプ
を追加しました。このICも外付け部品が少なく便利に使えます。
内部構成は下図のようになっていて、もともとステレオ用のアンプなのですが、
下図のような接続構成とすることで、BTLタイプのモノラルアンプとすることが
できますので使いやすいアンプです。







【回路構成】

上記の構成で、ISD2560を直接PIC16F84で制御することにします。LSI周りは標準の
ままの構成ですので、データシートどおりです。
問題はアドレスの制御方法なのですが、全ビットを制御しようとすると10ビットが必要
になってしまいます。
そこで、64単位に制御することとし、下位6ビットは0のままとすることにしました。
これで制御が必要なアドレスは4ビットだけになり、簡単な構成とできます。
結局6.4秒×9個のブロックに分割して制御できることになります。
PICからだけでなく、スイッチでもアドレスが指定できるようにするため、切替ができる
ようにしました。スイッチには4ビットのDIPスイッチを使っています。

以上のような内容で作成した回路が下図のようになります。 拡大できます。


















また回路図とパターン図のIVEX社のWinDraftとWinBoard用のファイルは、下記から
ダウンロードできますので、お使い下さい。

  ★回路図、パターン図のダウンロード(IVEX用)

  ★★★ パターン図(PDFファイル)

【PICプログラム】

今回の試作は、とにかく録音再生だけができるレベルです。しかもアドレス指定は
外部のDIPスイッチで行うだけとしています。
制御方法としては、下記のようなタイミングとなっています。



スタートボタン押下を検出して
動作開始。すぐ録音か再生かの
スイッチをチェックして分岐
アドレススイッチの入力を許可して
CEをLowにして動作開始。
6秒間継続後 動作停止








録音の場合には、P/RをLowに
して録音モードにしてから動作
開始。
録音中の表示用の緑のLEDを
点灯する。


これだけのことをするだけなのでプログラムとしては簡単です。
CCSのC言語で記述したプログラムが下記です。
まず下記が定義宣言と、メイン関数の部分で、メイン関数では、まず最初に
スタートスイッチが押されたかどうかをチェックし、おされていなければ何もしません。
おされていたら、録音、再生切替スイッチをチェックして、それぞれの処理関数を
呼んでいます。
録音、再生の処理関数では、上図のシーケンスを順番に実行しているだけです。





下記が録音と再生の処理関数で、シーケンスに従って順番に信号を出力
しています。 アドレスはスイッチからの入力のみとしていますので、
PIC側のプログラムとしては、ポートBの上位4ビットは入力モードのまま
としています。そしてスイッチの入力を可能にするため、SW Enable信号
である、RA1をLowにしてスイッチを有効にしています。

動作していないときは、LSIのPD信号をHighとして、省電力モードとして
います。









【外観】

本ユニットの概観は下記の写真のようになっています。


基板部の全体です。左側に操作スイッチとPIC
真中にISD2560とその周辺回路
右端に出力アンプ、下側に電源となっています。

ISD2560周りの詳細です。
コンデンサマイクはリード線で基板に直付けと
しました。

出力アンプです。外付け部品が少ないので
すっきりしています。
出力レベルを可変抵抗で調整します。


PIC16F84A周りと操作スイッチです。
左から録音再生切替、スタート、リセットスイッチ
右側がアドレス指定用のDIPスイッチです。
クロックにはセラミック振動子を使いました。





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